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Produce Next Report Vol.48:ブロックチェーン

~第1回 ブロックチェーンの特性とビジネスにおける活用分野について~

<はじめに>
ここ最近、メディアを通して頻繁に耳にすることが増えたブロックチェーンだが、
ブロックチェーンに対する理解が十分でなく、ビジネスへの影響についてもよくわかっていないという読者も多いのではないだろうか。

そのような背景を踏まえ、今後3回にわたり、
・ブロックチェーンの特性とビジネスにおける活用分野
・ブロックチェーンビジネスの落とし穴
・当社における事例
を中心に連載していく。

第1回である今回は、
・ブロックチェーンとは、具体的にどのような特性を持つ技術なのか
・ビジネスにおいて、どのような分野で活用できるのか
について解説する。

<ブロックチェーンの特性>
ブロックチェーンという言葉を耳にしたとき、
最初にビットコイン等の仮想通貨を思い浮かべる読者も多いかと思われるが、
仮想通貨はあくまでブロックチェーンの活用方法の1つにすぎない。

そもそもブロックチェーンという技術は、
全ての取引記録を皆で共有することで第三者機関を必要としない仕組みであり、
そのために従来の集中管理型システムに比べ、
① 改ざん耐性が高い
② 実質的なゼロ・ダウンタイム
③ 低コストで構築可能
という特性を持つとされる。

① 改ざん耐性が高い
ブロックチェーンでは、随時新しいブロックを生成することになるが、
その新しく生成されたブロックには、一定期間の取引記録に加えて1つ前のブロックの内容を示すハッシュ値というデータが含まれている。
このハッシュ値と呼ばれるデータが改ざん耐性のカギとなる。
もし過去に生成されたブロック内の取引情報を改ざんしようとすると、
改ざんしたブロックの内容を示すハッシュ値も変わってしまうため、
ハッシュ値を再計算してブロックを再生成し、それをもとに次のブロックのハッシュ値も再計算し、というように、改ざんした時点から現在までの全てのブロックを生成し直す必要が発生してしまう。
これを実行するためには膨大な計算量が必要となるため、改ざんは事実上不可能とされているのである。

② 実質的なゼロ・ダウンタイム
ブロックチェーンの特性として、①で述べたハッシュ値による改ざん耐性に加えて、障害に対する強靱さがあげられる。
ブロックチェーンは、全ての取引履歴が記録された巨大な台帳のようなものとも言え、
ネットワーク内の参加者が全員で取引記録を分散して管理している。
つまり、分散されたデータベース上に多くのデータが同時に存在することになる。
このため、自然災害やハッキング等によっていずれかのデータが消滅したとしても、他の参加者のデータが生きていれば全体としてのシステムを維持することができるのである。
このように、ブロックチェーンは全ての参加者のデータが同時にダウンしない限り継続的な運用が可能であり、障害やシステムダウンが極めて発生しにくい技術であると言える。

③ 低コストで構築可能
上述した、データを分散して管理するブロックチェーンの特性は、「分散型台帳技術」と呼ばれているが、この技術はシステム構築・運用コストを劇的に下げるものとしても注目されている。
例えば、従来の金融業界では、取引記録を銀行等が中央で集中的に管理するのが一般的であり、取引や顧客に関する膨大な情報をデータベースで管理するために、大規模な集中管理センターを保持する必要があった。
この管理には巨額のコストがかかる上に、堅牢なセキュリティと実質的なゼロ・ダウンタイムを実現するにはさらなる巨額のコストが必要となってしまう。
一方で、ブロックチェーンの分散型台帳技術を活用すると、リソースの少ない分散型のコンピュータやデータベースでの管理が可能となり、加えてブロックチェーンの高い改ざん耐性や実質的なゼロ・ダウンタイムといった特性によって、従来セキュリティ等に要していた莫大なコストについても削減することが可能となるのである。

<ビジネスにおける活用分野>
ここまでブロックチェーンの特性について解説してきたが、
ビジネスにおいてどのような分野での活用が期待されているのかについても見ていきたい。

ビットコインに始まったブロックチェーン技術は改良を続けながら、
金融分野はもちろん、それ以外の分野でもユースケースが広がりつつある。

具体的には、
・資金調達(例/クラウドファンディング)
・資産管理(例/土地登記等の公証)
・認証(例/デジタルID、真贋証明)
・商流管理(例/サプライチェーン、デジタルアセット管理・移転)
・公共(例/投票、予算の可視化)
・医療(例/医療情報)
等があげられる。

例えば、資産管理分野においては、土地の登記情報等をブロックチェーンで管理することが検討されている。
土地や建物、所有者に関する情報のほか、それらの移転や抵当権の設定等をブロックチェーン上で記録・管理することで、関連する業務の効率化が図れると期待されているのである。
ただし、従来のシステムを手当たり次第にブロックチェーンに置き換えれば良いわけではなく、ブロックチェーンの活用にあたっては、その必要性を見極めることも重要である。

土地登記等の公証においては、ブロックチェーンによって実現可能な、
・二重支払の防止:真正性の保証された取引が可能
・改ざんが困難:データのトレーサビリティが可能で、透明性の高い取引が可能
・実質的なゼロ・ダウンタイム:中央管理者を必要とせず、悪意を持つユーザがいてもエコシステムの安定維持が可能
の3つの特性が非常に重要な要素であり、従来のシステムでは実現にあたって多くのハードルが存在していた。
そのため、それらのハードルを克服できるブロックチェーンの活用が期待されているのである。

もちろん、土地登記等の公証の事例もあくまでほんの一例にすぎず、今後ユースケースのさらなる拡大が見込まれている。

<最後に>
ブロックチェーンは、あらゆる産業分野での活用が期待されている一方で、
日本ではまだまだ実証実験の段階であるものがほとんどである。
さらには、実証実験の段階で十分に効果を創出できていないケースや、
あるいは失敗に終わってしまうケースも多く、
ブロックチェーンビジネスを成功させることが容易ではないのも現実である。

次回となる第2回では、ブロックチェーンビジネスの落とし穴について、解説したい。

※この記事は2018/12/14にFacebookに投稿されたものです。

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